【諸江史耶】ビジネスとして成立させようとしたら生まれた表現

先日は音楽家の青木さんと、来年8月の『絵本ライブ』の演出についての会議をしました。

彼との会議は本当に内容が濃くて、二人とも主観ではなく、他のエンタメや具体的な手法をもとに説明をして進んでいくので、地に足がついている感じがして非常にやりやすいんですね。

先日の会議で話題にあがったのは「絵本の見せ方」で、当初『絵本ライブ』と言うからには来てくれたお客さん全員に物語を届ける必要があったので、でっかいスクリーンに映し出す想定をしていたんです。

ただ、今回の会場の作り的に、可能ではるけど魅力的ではないという印象を受けて、それならばと「パンフレットに見立てた絵本を配る」というのも考えてみました。

今度はそうなると、全員にクオリティを担保した絵本を届けるとなるとコストが跳ね上がるため、それも現実的ではないとなり、「では次」「じゃあ次」みたいな感じで、ぽんぽん打開策がぶつけ合われていくんです。

そこで青木さんからあがったアイデアが「そもそも、情報を与えすぎる必要もないのではないか?」というもの。

余白をうまくデザインして、例えばこの物語の主人公の女の子がどんな姿なのかは想像してもらうとか、そういった余白を残しておく演出ができても面白いのではないだろうか?と。

ならば!と僕は「ライブ終演後に答え合わせが出来る」ようにしてみたらいいかもと考え、

「ジョイスタジオにだけ、絵本ライブで取り扱う物語『VIVE』の原本があって、スタジオに来たら読めるようにしておく」

「この絵本はライブ終了後に購入ができるようにし、注文が入ってからオーダーメイドで作って届ける」

という風にすれば、そのライブだけで満足してしまうことは防げるし、お客さん一人ひとりにVIVEを想像してもらえるのかもと考えました。

青木さんとの会議の面白いところは、「ビジネスとして成立させようとしたら、新しい表現が生まれる」ところで、ここには並の量では済まない情報量と、仮説検証のデータが必要で、その甲斐あって、お互いにすごく密度の濃いキャッチボールができているのだと思います。

あと「表現への否定」が一切ない。

お互いに出したアイデアを、可能性のギリギリまで熟考して、どんどん没にしていく。

「聞いただけで没」みたいな、そんな失礼なことは一切しません。

そんな密度の濃い会議を重ねて、今日もまた絵本ライブの制作をしています。

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